大会長として、全国の皆様を熊本にお迎えできますことを大変光栄に存じます。
本大会のテーマは、「関係性の中で育まれる倫理:ケアの“問い”を立て直す」です。
看護実践の現場では、患者さんやご家族、多職種との関わりの中で、「これで本当に良かったのだろうか」「他にできることはなかったのだろうか」と立ち止まり、考え続ける場面が数多くあります。医療の高度化や価値観の多様化が進む今日、倫理的課題に唯一の正解を見出すことは容易ではありません。また、大学教員として学生と向き合う中でも、「倫理を教えること」の難しさを日々痛感しています。倫理は単なる知識として学ぶだけでなく、実践の中で葛藤や迷いに向き合い、自ら考え続けることで育まれるものです。だからこそ、人と人との関係性の中で対話を重ね、ともに問い続ける姿勢がこれまで以上に求められているのではないでしょうか。
本大会では、臨床哲学、看護倫理教育、医療者支援、性の多様性、赤ちゃんポストと出自を知る権利など、多様なテーマを取り上げます。開催地である熊本は、豊かな自然と歴史・文化に恵まれた地域であるとともに、「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」をはじめ、日本の医療・福祉・社会に大きな問いを投げかけてきた地域でもあります。全国の皆様とともに看護倫理について語り合い、新たな学びやつながりを育む場となれば幸いです。
一般演題では、研究成果に加え、日々の実践から生まれた問いや教育の工夫など、多様な視点からのご発表をお待ちしております。また、交流集会では、完成された取り組みに限らず、現場での試行錯誤や悩みを共有しながら、ともに考えを深める企画を歓迎いたします。
研究者、教育者、臨床看護職、多職種、そして学生の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第20回という節目の大会が、日本看護倫理学会の歩みを次の世代へとつなぎ、これからの看護倫理の実践・教育・研究を皆様とともに考える機会となることを願っております。
熊本は、雄大な阿蘇の自然、熊本城をはじめとする歴史や文化、そして豊かな食に恵まれた地域です。学術的な交流はもちろん、熊本ならではの魅力にも触れながら、有意義なひとときをお過ごしいただければ幸いです。
第20回日本看護倫理学会年次大会
大会長 青石 恵子
熊本大学大学院生命科学研究部 教授